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成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝

かなり長いですが、レイ・クロック自伝の書評です。レイ・クロックは、最も尊敬する経営者の1人なので熱が入ります。

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)
レイ・A. クロック,ロバート アンダーソン,野地 秩嘉,孫 正義,柳井 正,Ray Albert Kroc,Robert Anderson,野崎 稚恵

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まず最初に、レイ・クロック(以下、レイと略します。)という人物について簡単に解説すると 世界100カ国以上、約3万店舗にものぼる一大レストランチェーンであるマクドナルドの創始者です。

彼はシェイクを作るミキサーのセールスマン時代に、マクドナルド兄弟の経営するドライブインに着目し やがて、そのドライブインを全米はおろか、世界各地に展開する巨大企業にまで成長させたのです。

しかも、彼がマクドナルドを始めたのが52歳のときでした。 (ちなみに、もう1つのファーストフード企業の雄であるケンタッキー・フライドチキンの 創始者であるカーネル・サンダースは、65歳のときにケンタッキー・フライドチキンを始めています。)

この「成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝」は、立志伝中の人物であるレイの人生の回顧録であると共に いかにマクドナルドが巨大企業へと発展できたかの軌跡を、本人自らが語った貴重な書となっています。

日本では、マイナーなレイ・A・クロック

正直、レイの知名度は、日本では高くないと思います。

日本でもメジャーなアメリカの実業家・経営者といえば、アンドリュー・カーネギーやヘンリー・フォード、 現代では、ビル・ゲイツやジャック・ウェルチといった人物でしょう。

しかし、マクドナルドという企業に関しては、小さな子供でも知っているメジャーな存在です。その知名度抜群なマクドナルドを創業した人物が、あまり知られていないのは残念に思います。

本書は、「金持ち父さん貧乏父さん」シリーズ中で描かれたレイへの誤解を解く

日本でもベストセラーとなったロバート・キヨサキの「金持ち父さん貧乏父さん」という本があります。この「金持ち父さんシリーズ」の作中で、たびたびレイ・クロックの言葉が引用されています。

一つしっかりと頭に入れておいてほしいことがある。 それは巨富を築いたマクドナルド創始者レイ・クロックの次のような言葉だ。 「私のビジネスはハンバーガーを売ることではない。不動産が私のビジネスだ。」

『金持ち父さんのキャッシュ・フロークワドラント』 P.242

金持ち父さんシリーズは、非常に面白い本ではありますが、 実際のレイは、小銭を積み上げるスモール・ビジネスを好む実業家です。例えば本書でも

私は、ハリー・ソナボーンには、帽子を脱ぐ気持ちで、ローンを取り付けたことに敬意を示し、 この気持ちは今日でも変わらない。だが、その後ハリーが会社に示すようになった態度は、 衝突への火種をはらみ、そして、我々は決裂し、マクドナルドが崩壊の危機に陥ることになるのである。 ハリーは、マクドナルドを不動産ビジネスと考えており、ハンバーガービジネスでないことが そのときに明快になったのだった。

本書 P.173

続いて取り掛かったのは、社内に活気を取り戻す作業だ。 社内の確執はハリーが辞めると沈静化し、トップの管理職の一人は、ハリーの辞任を聞き 「ばんざい!マクドナルドはハンバーガービジネスに戻ったぞ」と言ったと聞いた。

本書 P.246

と記述しています。

マクドナルドを不動産ビジネスとして捉えていたのは、当時の重役であるハリー・ソナボーンであり 金持ち父さんシリーズ中で描かれているレイ・クロックの人物像は、誇張されているように感じます。 本書によって、これらの誤解が解けることを願います。(レイの父親は、不動産の目利きだったようですが)

「僕の人生のバイブル」というユニクロの柳井さんは、本書を読み違えていないか?

本書が新装されるにあたって、特典とも言うべきところが2点あります。 1つは、本書を「人生のバイブル」とするユニクロ経営者である柳井正さんの書評と もう1つは、その柳井さんと、ソフトバンク経営者である孫正義さんとの対談が収録されていることです。

ユニクロの経営者である柳井さんの実績は、疑う余地もなく素晴らしいものです。 見解の違いと言ってしまえば、そうなのですが、どうしても柳井さんの言葉で、納得できない部分があります。 その部分を抜粋します。

柳井
そうです。僕もそこに注目しました。ミルクセーキ用ミキサーのセールスをしていた彼は カリフォルニアでマクドナルド兄弟のハンバーガーレストランに出合う。 その店の効率性、標準化された作業手順に感心して、自分が全米チェーンにしてやろうと考える。 彼は飲食業界の人間ではない。それなのにマクドナルドの可能性を見抜いたわけです。 アウトサイダーとしての客観的な目で事業の将来性に注目したのです。

それこそまさにアメリカンドリームですね。日本で五〇歳を超えた人が 道端のレストランを見ても、なかなか起業には踏み出せない(笑)。

本書 P.340 - 341 (※太字・赤字は、管理人による強調)

この部分は、ちょっと読者にミスリードさせる部分だと思います。 まず、実際のレイが、なぜマクドナルドを流行らせようとした動機に言及がない。

レイの当初の思惑は、マクドナルド兄弟の経営する店舗の数が増えたならば 自分の売っているシェイクのミキサーの販売台数が伸びるだろうというものです。 この考えは、セールスマンとしては、さほど珍しくない思考でしょう。

何も最初から、自分がマクドナルドを、全米チェーンに押し上げようとしたわけではありません。

そして、1番誤解していると思う部分は、レイはアウトサイダーだということです。

レイ・クロックは一目見た途端、マクドナルドを全米チェーンにしようと構想したわけです。 何とも楽天的な人だなと思ってしまう。 ここで見過ごせないのは彼が飲食業のプロではなかったことです。

アウトサイダーとしての客観的な目で事業の将来性を見抜いた。それが彼の才能ともいえる。

本書 P.357 (※太字・赤字は、管理人による強調)

これを読んだ人は、「俺も、畑違いの業種に目を光らせて、起業の種を見つけるか。」と思うかもしれません。 もしくは、「飲食業のプロでもないのに、飲食業を始められる才能ってすごいなぁ。」と思うかもしれません。

私に言わせれば、レイは決してアウトサイダーなどではありません。 彼は一流の飲食業の目利きだったのです。彼がマクドナルドを見出すことができたのも 彼のキャリアとは無縁どころか、密接に関係しています。畑違いどころか、同じ領域なのです。

私がそう考える根拠を、本書から挙げていきます。

ドリンクはどれも一杯につき一ドルで、シャンパン、ブランデー、バーボン、スコッチ、何でも取り揃えられていた。 その当時、私はまったく酒が飲めなかったが、均一価格と簡素なフードサービスは、その後も長く記憶に残った。 食べ物は、メーン州の名物ロブスター、ステーキ、それにローストダックのみだったので、メニューの類は必要なかった。 数年後、これらの明朗会計はマクドナルドのモットーである「愚直なほどに簡潔に(キープ・イット・シンプル、 ステューピッド)」を生んだ。

本書 P.63

レイが、ピアノ弾きとしてパブやクラブを転々としていた時代のエピソードです。 彼は、多くのケーススタディ、つまり、繁盛する飲食店とそうでない飲食店を体感していたのでしょう。

飲食業に対する分析の目の鋭さが、わかるかと思います。 そして、レイはペーパーカップ(紙コップ)を売る会社にも就職しています。 レイ自身、紙コップ業界に将来性を感じていたと述べています。また、

将来はシェフまたはフードサービスの仕事に就くだろうという骨相学者の予測が書かれていた。これには驚いた。私は、そのときすでにフードビジネスに就いており、厨房にも特別な思い入れがあったからだ。

本書 P.74

自身の就いた紙コップ販売会社は、フードビジネスだと述べています。

取引先の多くは、飲食店が多いので、この述懐は最もです、そして厨房にも関心があると告白しています。

レイは、その紙コップ販売会社でトップセールスとして君臨します。 そのトップセールス振りを思わせるエピソードもあります。

「マクナマラ、もし売り上げを伸ばしたいなら、方法は一つしかない。持ち帰り用を売るしかない。 信じられないならこうしよう。二〇〇個、いや三〇〇個のカバー付きカップを無料で提供する。 一ヵ月試すのに必要なだけくれてやるから。君のところの客は、ほとんどがウォルグリーン社の社員だ。 彼らにアンケートを取って、このアイデアを好きかどうか聞いてみればいい。 カップは無料なんだ。試してみる価値はあるだろう?」

本書 P.75

持ち帰り用のドリンクというレイの発想に対して懐疑的な取引先に、レイが提案する場面です。 その後、この試みは大当たりし、レイの取引量が大きく増えるきっかけとなるのですが レイの飲食業に関するコンサルタント能力の高さがうかがえます。

フードビジネスを細分化して、フードビジネスの仕組みを理解していないと、顧客分析、立地条件を加味し、 テイクアウトによる売り上げ構成比率の向上を思い当たることは不可能に感じます。

その後のレイは、紙コップ業界に不安を抱き、ミルクシェイクに着目し、そのミキサーを販売するようになります。 ミルクシェイクに行き着いたのも、彼のフードビジネスに関する見識の高さによるものでしょう。

本書には、ミルクシェイクの販売価格についての面白いエピソードなども盛り込まれています。 ミルクシェイクミキサーの販売のために、飲食店経営者が集まる会合などにも参加した記述もあります。

このように、本書ではレイ・クロックが、フードビジネスの達人であることを示す箇所がいくつも存在しますがなぜ、ユニクロの柳井さんは

彼は飲食業界の人間ではない。それなのにマクドナルドの可能性を見抜いたわけです。アウトサイダーとしての客観的な目で事業の将来性に注目したのです。

と、2度に渡り、本書で言及しているのでしょうか。プレジデントなどのビジネス詩でも、同様のことを述べています。

フードビジネスの真髄を理解しているからこそ、それだからマクドナルドの可能性を見抜いたわけなのです。

ここが、本書について「人生のバイブル」と言うわりに、私には納得できない部分ではあります。 どう読んだら、上記のような結論になるのか、柳井さんの真意なのか、出版側の意図なのかは不明です。

本書のタイトルの付け方も、納得はできませんがオススメの書

本書で、一番の不満点を挙げると、なぜこの本のタイトルが「成功はゴミ箱の中に」なのかということです。 本書の原題は「Grinding It Out 」です。出版社側の『こういうタイトルだったら意外性もあって 売れるんじゃないの。』というような意図が透けて見えるようで、違和感を感じます。

レイ自身、「成功はゴミ箱の中に」なんて言葉に、自分のエッセンスを込めたわけではないだろうと。

この安易なタイトルだけで本書を敬遠するには、あまりにも惜しいことだと考えます。

最後に、この自伝でも触れられていますが、レイ・クロックは糖尿病と関節炎に悩まされ、 胆のうの全てと甲状腺の大半を失っていると書いています。

実は、この自伝では、書かれていませんが、レイは若いころ工場で働いていたときにケガを負い 左手の薬指の第一関節から先がありません。こういったハンディを抱えながらのセールスの仕事は いろいろと苦労があったに違いないでしょう。努力や反骨心、陽気さや好奇心など、レイの人柄や そのスケールの大きさ、物事を肯定的に接する態度には、興味が尽きません。

願わくば、多くの人にレイ・クロックの立志伝を知って頂きたいと思います。

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)
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